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第1回 筍筍は素の味がいちばん向笠千恵子(フードジャーナリスト、エッセイスト) 筍料理にはアンチエイジングのイメージがある。もともとが竹の新芽であり、若竹煮、若竹汁……と、料理名も若々しい。若竹とは若布と組み合わせた煮物という意味で、海藻と一緒に食べれば栄養的にも文句なし。あまり知られていないが、筍そのものもパワフルな素材である。たんぱく質、カリウム、ビタミンB11、セレニウムなどのミネラルに富み、整腸作用までもっている。 その証拠のひとつは、孟宗竹の驚くほどの成長速度だ。筍好きの母のために、孟宗という若者が雪が積もった竹林で掘り当てたという伝説があるように、冬のうちから発芽して、いったん地表に出るや、一〇〇日で二〇メートルも伸びてすぐに竹になってしまう。だから、食べるのも急がなくてはならず、地表からちょんと頭をのぞかせたぐらいのときがおいしさのピークである。 孟宗竹そのものは中国から琉球経由で薩摩に渡来。江戸時代半ばから広まった。この孟宗竹のほかにも寒山竹、根曲竹、真竹、淡竹などの細竹が日本中に分布していて、どの土地でも春が近づくと筍掘りに夢中になる。筍の成長力に神秘を感じるせいでもあろう。 筍で忘れがたいのは鹿児島、京都、高知、長野……。早掘りの鹿児島では、収穫はなんと晩秋から。素人目にはただの竹林にしか見えないが、農家のおじさんはここぞと思うと、地面に目印の棒をそっと立て、鋤を静かに差し込んでいき、掌に収まるほどの可愛い筍をぐいっと掘り起こす。わたしは『竹取物語』の翁がかぐや姫を見つけたシーンを思い出したくらいだ。 京都の筍農家も同様の掘り方である。孟宗竹の筍は、地中にあるうちでなければ色白でやわらかい肉質を味わえないのだ。当然、料理もだしで上品に炊くのが最高だし、新鮮なら刺し身にしてわさびで食べるのが一番。また、京漬物にも京野菜のパスタにも旬の筍はおいしい。 一方、スリムな体形の寒山竹などの筍は地表に顔を出したところを抜くのが好機。土地の直売所や道の駅で山菜などと一緒に売られているし、料理法も味噌汁の具にしたり、皮ごと焼いて味噌をつけるなどワイルドである。 また、北信濃の飯山では根曲竹の筍の季節になると、スーパーはさば缶を山積みにして売り出す。身欠きにしんと甘辛く煮たり、味噌汁に入れていた料理が、近年は手軽で安価なさば缶を使った筍汁にアレンジされて、旬の味覚になっているのだ。少しずつ時代に合わせながらも、筍の味は確実に伝えられていくのである。 |
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