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第2回 山菜おらが自慢の山菜の味向笠千恵子(フードジャーナリスト、エッセイスト) 岩手の友人から春の便りがきて、時候の挨拶に「今日、ばっきゃをとってきました。いよいよ春です」と、あった。春のよろこびがじーんと伝わってきた。 「ばっきゃ」とは「ばっけ」ともいい、ふきのとうの東北方言である。ふきのとうは漢字で「蕗の薹」と書くが、とうがたつ前の蕗を指すというのが公式見解で、わたしはわたしなりに、蕗の蕾の意味と勝手に解釈している。その方が、掌にころんと収まる形のイメージにぴったりなのだもの。 春になると、ふきのとうが最初に出て、そのあと山菜が次々と芽を出すようだ。東北だけでなく日本全国で、ふきのとうは待ち遠しい春だよりの第一便なのである。 わたしが今年初めて見つけたふきのとうは、1月の高知の日曜市。2月の新潟でも入手できた。どちらの品も、東京のスーパーに比べると大人と子供の差。でも、固い蕾を刻んで味噌汁や納豆に入れると、舌の上にいっぺんに春がやってくる。小さくても、養殖のへなへなとは違うのだ。 ふきのとうを味噌と炒めて砂糖、七味で調味すれば、ばっけ味噌のできあがり。ほろ苦風味をちびちび舐めていると、お酒はどんどんすすむし、おむすびに塗れば、食べ過ぎるのが難というくらいにおいしい。 ばっけ味噌をはじめ、山菜類は味噌と相性がいいが、もっとおいしいのは油とのコンビ。天ぷら向きの素材でもあるのだ。 銀座の名店「天ぷら近藤」は、春になると山菜に力を入れる。奥さんの実家の茨城から直送したこしあぶらなどを籠盛りしてカウンターに置き、客に目で楽しませながら、近藤さんが軽やかに揚げてくれる。これが、何ともおいしい。えぐみが油の力によってうまみに転じているのが、山菜天ぷらの真骨頂である。 たらの芽、こごみ、やぶれがさ……。緑の濃淡がいろいろある春山の恵みを眺めながら、旅で出会った山菜を思いおこすのも楽しい。 奥飛騨の神岡の山林で、腰が痛くなるまでこごみを摘んでしまったのは、案内してくださった方につられたせい。毎年のことのはずなのに、地元のベテランほど、宝の山に入った気分になって夢中になるようだ。 恐竜時代の植物のようにおどろおどろしいこごみの姿がいい例だけど、山菜は人類よりも早くから地球に生息していた。だからとても生命力に満ちている。野草の一種でもあり、このうちのおいしいものが野菜に改良されたのである。山菜を一口食べることは、人類の歩みを考えることなのだ。 などと、わたしは、少し遠い目をしながら蕗味噌をつまみ、山菜天ぷらそばをたぐって、この春をすごすつもりでいる。
向笠千恵子さんの最新刊『本物にごちそうさま』(ポプラ社、1,600円+税)。
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