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第4回 梅干し梅は百薬の長なり向笠千恵子(フードジャーナリスト、エッセイスト) 梅干しづくり真っ盛りの季節。日本中で梅が仕込まれているのかと思うとわくわくする。梅のおむすび、梅割りの焼酎をはじめ、梅干しによって初めて生まれる美味がいくらでもあるし、料理の隠し味としてもかなり使える。そんな幅広い魅力のせいで、梅干し用の青梅を入手するのは誰にとっても心地よい歳時記になるのだ。 梅干しはスーパー食材でもある。成分中のクエン酸やリンゴ酸には疲労物質撃退効果があるし、殺菌効果もすばらしい。 昔の梅干しは塩分が30パーセントもあったので殺菌作用が強かったが、11パーセント前後に漬けた現代の低塩梅干しでも同様の効果は得られる。ただし、無農薬か最低限の薬だけで栽培された梅を、伝統製法できちんと漬けた梅干しに限る。 なぜかというと─現代の梅干しの主流は、多量の塩で下漬けし、そのあと水槽で塩抜きして梅エキスを吐き出させている。つまり、芯のないふにゃふにゃ梅状態にしてしまい、口当たりのよい甘い調味液を含ませただけの"梅干しもどき"が結構多いからである。 それだけに、わたしは宮崎県都城市・紅梅園の徳重文子さんを梅干しの師匠としてうやまっている。彼女は、子どものころから病弱だったが、梅干しで治ったことに感激して梅の木をこつこつ植え続け、木が千本になったときに自園自製の梅干し屋を開業した方。もちろん無農薬栽培、伝統製法の梅干しである。それから半世紀、徳重さんも80歳近くなったが、精魂込めた梅畑、梅干し製造の技、そして梅の文化を次世代に伝えようという情熱はますます強まるいっぽうである。 今年もわたしは紅梅園を訪れ、尾形光琳の屏風絵のような紅梅白梅の古木の梅見をしながら、梅料理をごちそうになった。 にんじん、大根、椎茸と地鶏の煮込みには、梅干しが丸ごといくつも入っていた。軽い酸味のおかげで、地鶏のうまみが爽やかにアップしていて、実にいい。 もう一品は郷土料理の「ずし」。地鶏、里芋、ねぎ、にんじんなどを細かく切って米と一緒に椿油で炒め、醤油味で炊いた─いわば都城風ピラフ。仕上げに、ほぐした梅干しを混ぜ込む。霧島山麓の黒ぼく質の土で育った野菜は味が深くて濃い。だから、うまみを梅干しで爽快にまとめてやるのだ。 飲み物のほうは種酒の炭酸割り。青梅をすりおろして土鍋で煮詰める梅肉エキス(これは体に効く!)をつくるときの余り物利用で、梅の種を漬けた自家用梅酒である。つくり方は普通の梅酒と同じで、梅の実をそのまま種に置き換えればいい。種には実に勝る栄養成分があるというだけあって、味も香りもとても濃くておいしい。 実から種まで、梅は完全健康美味素材なのである。 |
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