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第7回 かまぼこ各地に名物かまぼこはあれども、江戸前の味は、はんぺんに尽きる向笠千恵子(フードジャーナリスト、エッセイスト) 小田原の「かまぼこミュージアム」は名産地にふさわしい秀逸な名称だ。わたしは、すぐに2人のかまぼこ博士を思い出す。取り寄せさえすれば、日本中の美味なかまぼこがいつでも食べられるけれど、博士たちはどちらももういない。 1人は高知大学名誉教授で農学博士の志水寛さん。水産練り製品の泰斗(たいと)で日本中のかまぼこに精通しているので、名店をたくさん教えてもらえた。土佐湾に面した旧赤岡町にある、主人夫婦とおばあちゃんとで励む店がご贔屓で、掃除が行きとどき、材料の魚が揚がらない日は閉店するいさぎよさがその理由だった。もちろん、とれとれの鮮魚、清潔な作業場、添加物ゼロだからでもある。 わたしも体験したのだが、この店の「えそ」(体長30センチほどの細長い白身魚)のかまぼこは焼きかま、蒸しかまどちらも、弾力感のあとに甘味が広がり、刺し身かと思うくらいの新鮮感。冷酒に合いそうなかまぼこでもある。それもそのはず、赤岡は大盃で飲みっぷりを競う大会が開かれるほど酒豪揃いの土地柄なのだ。 もう1人の博士は、築地のかまぼこ老舗・佃權(つくごん)四代目の金子喬一さん。全国蒲鉾水産加工業協働組合連合会会長を務めた方で、この8月が1周忌だった。屋号が示すとおり、家康に従って江戸へやって来た摂津・佃村の漁師が先祖で、江戸風かまぼこを創案した店の当主だけに、たいそう気っぷがよく、気くばりとロマンの心を併せもっていた。 金子さんには、「蒲鉾と書くように、魚のすり身を串に巻きつけて蒲(がま)の穂のような形に焼いたのが始まり。さつま揚げ、天ぷら、揚げ天などと呼ばれる練りものも含めて、すべてがかまぼこです。そして土地土地に、地場の魚の郷土かまぼこがあるんです」と、練り製品の俯瞰図を教わった。 そんな江戸っ子大将の自慢が、はんぺんだった。江戸湾で鮫が獲れた時代、鮫は石臼で挽いてかまぼこ原料にされた。あるとき、若い衆が力を入れすぎたのか、空気を抱き込んでふわふわの生地になってしまった。それを木型に詰めてゆでてみたら、たいそう口当たりが軽い美味が生まれ、江戸っ子に拍手喝采されたという伝説がある。 わたしはそれを聞き、江戸っ子の超先取り味覚に驚いた。というのも、現代のテレビ番組でも、いちばん多用されるほめ言葉が「やわらかくておいしい」という台詞だからである。 佃權のはんぺんは鮫のすり身、つくね芋、卵白を木型に詰めてゆで上げる。四代目直伝のおいしい食べ方は、表面をきつね色に炙って、わさび醤油をつける方法。そして、理由は教えてもらえなかったが、旬は秋だそうな。 |
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