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第12回 わかめ日本特産のヘルシー海藻は、磯の香りと栄養があふれんばかり向笠千恵子(フードジャーナリスト、エッセイスト) 今年は春から縁起がいい。徳島、宮城と、行く先々が偶然にもわかめ産地で、旬のわかめ料理に出合えたのだ。土鍋の熱湯にわかめをさっと通し、茶褐色から翡翠色に変わったところをポン酢で味わうしゃぶしゃぶ。とれ立てわかめをざくざく切って、イカやヒラメと盛り合わせた海鮮丼。歯にとろけそうな新わかめの酢のものは、お代わりしてしまった。 わかめは若布と書くように、「若め」でもあるから、心がうきうきする。実際、ヨード、ミネラル、アルギン酸などに富んでいる。乾燥したり塩蔵すれば保存もきくから、神様へのお供え物にもなった。北九州や下関に伝わる和布刈(めかり)の神事はその名残りである。海外でヘルシー食材として注目されるずっと以前から、わたしたちはわかめの威力を見抜いていたのである。 わかめは壱岐、対馬、山陰、能登など日本海側でよくとれ、東京近辺でも三浦半島でわかめ干しの光景に出合える。北海道南部以南ならどこでも生育するからだ。だが天然ものは希少になる一方で、養殖技術の進んだ三陸と徳島が生産量の両横綱--リアス式の海辺と渦潮の鳴門の対決である。 どちらの養殖法も、糸に胞子を付けた種わかめをロープに植え込み、そのまま海に沈めてやるという技法。もちろん、肥料などは不要である。わかめは秋に芽を出して、冬から春にかけて成長し、夏には枯れてしまう一年生海藻なので、収穫は春先が勝負。ロープに付いたわかめを船の上に引き上げると、武蔵坊弁慶が持ったら似合いそうなくらい大きな鎌で、漁師がばっさばっさ切り取っていく。 陸に戻ると急いで加工にかかる。三陸、鳴門どちらも塩蔵が大半だが、鳴門には「灰干し糸わかめ」という特別な技法がある。茎を除いた葉にていねいに裂け目を入れ、木灰をまぶして天日干しするもので、灰のアルカリ分でわかめの緑色と弾力を保てるため、水で戻すと生そのままのみずみずしさが甦る。あらかじめ細く裂いて干してあるから、料理にも手軽だ。研究熱心で商売上手な阿波人気質が生んだ、すばらしい食遺産である。 なおこの灰干し、今年聞いたところでは、加工用の灰に炭の粉を用いるようになっていた(呼称は同じ)。環境と安全性への対策ということだが、炭なら遠赤外線効果もありそうだ。この味この技を残すためにも、徳島に行ったら土産は灰干し糸わかめで決まり! |
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