そばの散歩道


第16回 すっぽん

ぷるぷるの食感が魅力なうえ、滋養強壮の源で、コラーゲンの宝庫

向笠千恵子(フードジャーナリスト、エッセイスト)

 一昔前までは、すっぽんは男性専科の食べものというのが常識。それがすっかり様変わりして、グループで食べに行ったり、鍋セットを取り寄せたりする女性が珍しくない。

 養殖技術の進歩で価格が手軽になったのと、男性並みに働く女性が増えてすっぽんが疲労回復に効くことに気付いてしまったからだ。一口二口と食べているうちにもう細胞が勢いづき、肌が潤ってくる感覚は、すっぽん以外にない。高たんぱくでビタミンB類に富んでいるのはもちろん、すっぽん全体が、コラーゲンのかたまりのようなもので美肌効果大なのである。そのうえ低カロリーでもあるから、まさに女性向きの食べものといえよう。

 わたしは、仕事机にすっぽんの甲羅をディスプレイしている。大分から取り寄せる鍋セットは、1匹分がすべて切り身になっていて、甲羅がおまけにそのままの姿で付いてくる。すっぽんの異名を「まる」というとおり丸い形で、洗って乾かすとシュールな造形だから、食欲を刺激するオブジェになるのだ。

 養殖すっぽんは大分県が盛んで、味もいい。わたしは由布院温泉で安心院産すっぽんの鍋を食べて以来のファンである。とろとろのスープと、肉や皮のぷるぷる感にうっとりしてしまったし、翌朝の肌のしっとりぶりにも感激したものだ。

 安心院の町へは湯布院から車で北へ半時間。すっぽん屋ののぼりがはためくわ、民宿ですっぽん鍋が注文できるわ、すっぽん一色。県が一村一品運動を始めたとき、温泉で育てたすっぽんを目玉にした土地なのだ。

 安心院の人々は、「天然もんより肉のやわらかな養殖すっぽんの方がうまい」と、口を揃える。安心院産は一年物のピチピチで、温泉プールで育つおかげで一段と身がやわらか。わたしが訪ねたとき、プールの傍らでは手のひらサイズの子亀たちが休憩中だった。これがぽっちゃりたぷたぷの肉とコラーゲンを身につけ、1キロ大に肥えるとはびっくりだ。

  すっぽんはから揚げもいいが、水炊きにし、ぽん酢とゆず胡椒で味わうのが最高。ねぎなどを入れれば、さらに味がしまる。鍋を火にかけると初めは山のようにアクがわいてくるから、ていねいにすくい取るのがコツ。すると、黄金色の脂が水玉状に浮かんだコラーゲンたっぷりのスープになり、肉と皮にはうま味とコラーゲンがひしめきあっている。肌が気になるお年ごろならば、その鍋の中を見るだけで、効きめのほどが楽しみになるはずだ。




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