そばの散歩道


第20回 さんま

日本に秋を運ぶ、大衆魚の王様 黒目ぱっちり堅太りなら、美味は保証付き

向笠千恵子(フードジャーナリスト、エッセイスト)

 さんまが店頭に並ぶのが年々、早くなっている。そして漁が盛んになるにつれ価格はどんどん安くなる。また、さんまは抗酸化作用のあるDHAなど体にいいものばかりを含む。どちらも大歓迎である。

 さんまは回遊魚で、プランクトンを食べながら表層部を泳いでいる。15〜18度の水温を好むが、その水温が近年上昇しているため、以前より早く北上するし、北海道沖から南下するのも早まっているようだ。

 北海道の水揚げ拠点は釧路で、気仙沼、銚子……と漁場がどんどん南になって、晩秋に熊野灘に到るころには脂がすっかり抜け、旬の時季よりふた回りほども細く小さくなってしまう。でも、この地域の人々はそれはそれでよしとして、丸ごと天日干しにしたり、押し寿司のさんま寿司にして、賞味する。

 北海道の水揚げ拠点は釧路で、気仙沼、銚子……と漁場がどんどん南になって、晩秋に熊野灘に到るころには脂がすっかり抜け、旬の時季よりふた回りほども細く小さくなってしまう。でも、この地域の人々はそれはそれでよしとして、丸ごと天日干しにしたり、押し寿司のさんま寿司にして、賞味する。

 さて、脂ののりでいうと、釧路沖周辺で捕れるものが最高といわれる。和歌山市の雑賀崎漁港名物の灰干しさんまも、釧路沖で揚がったものを冷凍しておき、年間通して使用するくらいだ。さんまで知られた気仙沼漁港にしても、漁船は必ずその時季に最高のさんまがいる海域まで出かけている。

 旬のさんまを追いかけ港を巡ったなかで、忘れがたいのは福島県いわき市の小名浜港。遠くに阿武隈連峰を望む岸壁で、明け方に帰港したさんま船が休憩中だった。船縁から突き出たサーチライトは集魚灯。さんま漁は夜中が勝負で、暗闇の海面に強い光を浴びせかけ、いったい何事かと浮上してきたさんまを一網打尽にするのである。

 地元の料理研究家・志賀京子さんによると、「水揚げしたては鱗がぴかっとシャープに輝いていて、体がぴんと張ってます」とのこと。まじまじ見ると、確かに秋刀魚の刀そのものの迫力。また、黒目がぱっちりしているのも鮮度の条件である。

 塩焼きは、塩で肌を磨いてから水洗いし、あらためてふり塩をして、わたを取らずに丸ごと焼くと、うま味を逃がさない。

 郷土の味なら、ぽうぽう焼きという常磐海岸風さんまハンバーグ。三枚におろして身を叩き、ねぎ、生姜、青じそ、白ごま、味噌を練り混ぜ、小判形にまとめて両面焼きにする。

 温まるのはさんま汁。さんまの筒切りを具にした味噌汁で、わた付きで煮込むほうがおいしい。さんまはわたの苦味あってこその美味なのである。




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