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第21回 牛肉霜降り肉のおいしさと美しさは、日本人がつくった最高のご馳走食材向笠千恵子(フードジャーナリスト、エッセイスト) 表向きは、牛肉を食べる習慣は明治以来とされているが、実は肉食の歴史は古く、奈良時代から何度も禁止令が出されている。すなわち、それだけ違反者が多かったのだ。江戸時代、彦根藩が大名同士の贈答品にした牛肉の味噌漬けも大好評であった。 明治になって、牛鍋がすぐ大ブームになったのも、そんな下地があったからだろう。おおっぴらに食べる肉はずしりと食べ応えがあったし、文明開化最先端のハイカラ料理だったから好感度大だった。 牛鍋が進化したすき焼きが牛肉を和風にアレンジしていたことも幸いした。醤油とねぎが肉の臭みを抑え、同時に肉のうま味を強調して、日本人の舌にあった美味をつくりだしたのである。 牛肉に慣れるにしたがい、在来牛の黒毛和種がすばらしくおいしいことも分かった。肉に脂肪が混じりやすい体質なのだ。しかもそれが細かく入り組む。つまり霜降りになりやすい。とくに兵庫県の但馬牛は肉質がいいため、子牛が各地に引き取られ、肥育した土地の名を冠につけたブランド牛になった。松阪牛も近江牛も、正確には但馬出身なのである。 ブランド牛の霜降り肉がポピュラーになるにつれて、すき焼き人気も盛り上がった。1961年に始まった加山雄三の映画・若大将シリーズは主人公がすき焼き屋の息子という設定だから、このころにはすき焼きはカッコいい、ステイタスメニューになっていたようだ。 人気の理由は、手軽な鍋料理であるうえ、ご飯のおかずになり、酒の肴にもぴったりという点にあったのではないか。それも、酒は和洋温冷いずれとも合うのだから申し分ない。 それやこれやのことをまとめた『すき焼き通』(平凡社新書)という本を昨年に書いて以来、すき焼き屋とすき焼きファンの集い「すきや連」が結成され、美味情報を交換するようになった。また、10月15日は「すき焼き通の日」に制定された。世にすき焼き好きが多いのは、うれしいびっくりだ。 また、すき焼き俳句の会もできた。 さて、日本の牛肉史では、黒毛和種の霜降り肉ばかり注目されがちだが、赤身肉のおいしさにももっと目を向けたいと思う。最近見直されているのは日本短角種。在来種の南部牛を改良した肉牛である。赤身肉と脂肪がくっきり分かれる肉質で、それだけにステーキ、ローストや煮込みにすると、肉本来のうま味が味わえる。まもなく霜降り肉と赤身肉が拮抗する時代が来るはずだ。 |
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