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第22回 かにずわいがにの雄は豪快、華麗な美味。小さな雌は、コクのある身と卵が醍醐味材向笠千恵子(フードジャーナリスト、エッセイスト) 毎年11月6日、富山湾以西の日本海で、ずわいがにが解禁になる。それに合わせて各県の販促イべントが東京で開催されるので、わたしはすぐに駆けつけてしまう。 今年は、兵庫県豊岡市のかにが皮切りだった。城崎温泉近くの津居山港に揚がるずわいがにの雄(オス)を「津居山がに」というブランドで売り出し中なのだ。目印ははさみに付けたタグ。漁師が自ら付け、漁船名も入っている。「越前がに」への対抗心も満々のようだ。 「津居山がに」を獲る漁船は16隻。漁場は津居山の沖約50キロの大陸棚の斜面で、もちろん日帰り操業だから、そのぶん鮮度がいい。値段はけっして安くはないが、味はきちんとそれに見合っている。 日本近海には千種あまりのかにが生息しているが、食べるならずわいが一番、とわたしは思う。ずわいがに、松葉がに、越前がに、加能がに(加賀と能登の産)、と各地で呼び名は異なるが、すべて同一のかにである。 ただし、雌(メス)には別の名がついていて、せいこがに、せこがに、こがに、香箱(こうばこ)などと呼ばれる。雄は脚を広げると70センチほどもあるけれど、雌はその半分の大きさだし、値段もぐんと安いが、うまさは甲乙つけがたい。 人に贈ったり、人からもらったりするなら、雄がいい。見た目も味も堂々たるもので、誰だって大感激するはずだ。 でも、日本海の港々や金沢の街などでは、雌に人気がある。なにしろ、香箱は腹に卵をかかえ、甲羅の中の卵巣は内子という珍味なのだ。小さいぶん脚は細いのだが、身はみっしり入っているし、雄の身よりもコクがあるような気がする。金沢には、おでんの種にする店もある。 寒い夜、差し向かいで口数少なく、ちまちまと香箱をつっつくというのは、いちばん幸せな冬の過ごし方ではないだろうか。 さて、ずわいをさばくときは、豪快かつ繊細にいきたい。まずは仰向けにして、腹を開ける。雄はふんどしと呼ぶ部分を取って、指をかけて甲羅をはがす。雌の場合は円形の前掛けを持ち上げる。甲羅の中の「がに」という「えら」は食べないほうがいいが、そのほかのわたや薄皮、そして雌の内子はどれもおいしく食べられる。次は脚にかかる。脚を根元から切り取って、食べやすいように切れ目を入れればいい。なお、脚は白い側が殻が薄くて刃を入れやすい。 いずれにせよ、それなりにかにと格闘することにはなるが、そこまで下ごしらをしておけば、後は法悦境が待つばかりである。 |
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