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俺流鍋焼きうどん発酵学者・文筆家 小泉武夫
昔鍋焼きうどんは、昔は冬の寒い日の夜に街頭で売り歩かれたらしいが、今は街の食堂の冬季限定品目になっている。世界的に見てもとても珍しい食べ方であるのは、小さい土鍋で煮ためんを、じかにその鍋に箸を突っ込んで食べることで、鍋という台所道具がそのまま食器になっている点である。今年もあちこちの食堂で鍋焼きうどんを食べてみたが、うどんとその上にのせる具はどの店もほぼ共通したところがあった。うどんは丸太で、コシが強いもの、具は蒲鉾(かまぼこ)あるいは鳴門巻き、エビの天麩羅、細工麩(さいくふ)、煮含めたシイタケ、油揚げ、卵焼き、サヤエンドウなどである。 さて、我が輩の家にも、鍋焼きうどんに適するちょうど良い大きさの土鍋があったので、いつか自分でもこしらえて賞味してみようと考えていたが、それをつい先日実行 してみた。幸いにも、うどんはコシの強い讃岐ものの半生めんがあったのでそれを使った。 以下は味覚人飛行物体流鍋焼きうどんのつくり方である。なんら難しくはない。 土鍋にダシ汁を張り、適宜の調味料(酒、みりん、醤油など)を加えて味を調え、そこにゆで上げておいたうどんを入れる。その上から生卵1個を割り落とし、さらに殻付きエビを3匹ほど加え、ついでにちょうど手元にあったナメコの缶詰(小)も加え、最後に冷蔵庫の中にあった使い残しの豚バラ肉を加えてから蓋をして弱火でグツグツと煮る。 ほどよく煮えたところで、出来上がりだ。蓋を開けると、パーッと湯気が立ち上り、エビの赤が目に鮮やかで、また割り入れた鶏卵を崩してみると、半熟の黄身がこれまた目に眩(まぶ)しい。まず七味唐辛子を少し多めに振り、次に鍋の中のうどんに直接箸を付け、熱いのでフーフーと息を吹きかけながら啜(すす)った。それでも口の中のうどんはまだ熱く、それを顎下(がっか)に飲み下すと、その熱さがスーッと喉の下の方まで伝わっていった。加えたナメコのヌメリが熱を逃がさないのだろう。そして七味唐辛子のピリカラが、その熱さを口の中で一層囃(はや)し立てる。 次に半熟卵を崩してそれも食べると、卵黄がトロリと溶けてきて、とたんに口の中はマイルドになった。また、エビは、ダシ汁のうまみと、うどんからの微(かす)かな甘みを吸ったものだから、絶妙であった。うどんの一本一本にもうま汁がしっかりとまとわりつき、寒い冬の一日の幸福なひとときとなった。 小泉 武夫(こいずみ たけお) イラスト/茂本ヒデキチ |
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