《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

年明けうどんは正月の華

第十回 片山虎之介

全国屈指のうどん処として知られる香川県讃岐から、楽しいかけ声が聞こえてくる。年が明けたら、うどんを食べようというのだ。名付けて「年明けうどん」。言うまでもなく「年越し蕎麦」と一対にして、親しんでもらいたいという思いが込められたネーミングだ。

「年明けうどん」の見本を手にする、さぬきうどん振興協議会の香川政明さん(左)と安藤弘さん(右)。

年明けうどんとは、真っ白いうどんに赤い具を乗せ、紅白の組み合わせで正月を祝おうという、縁起もののメニューだ。この提案が広く普及して、初詣の際に、みんなが年明けうどんを食べるようになれば、蕎麦店、うどん店も新年早々、活気づくに違いない。

年明けうどんを食べようという提案を、「さぬきうどん振興協議会」が平成20年にしてから、今年で3度目の正月となる。めでたくて、しかも美味しい話は、誰もが好きなので、このメッセージ、年を重ねるごとに賛同する人たちの輪が広がっている。今年の正月はさらに多くの人たちが、「年明けうどん」の名前を目にする、あるいは耳にすることだろう。

「年明けうどん」関係の様々な商品が、各社から販売されている。そのバリエーションの多さに、年明けうどんに寄せる関係者の期待の大きさが現れている。

太くて、長くつながるうどんは、昔から縁起の良い食べ物とされた。正月にうどんを食べる習慣は、もともとはお隣りの中国から伝わってきたものらしい。

中国の正月は、まず1日に、お金がたまるという縁起もののマントウを食べる。2日には子孫が繁栄するという餃子を食べ、3日は金儲けに通じるというワンタンを食べる。そして1月4日には、長寿を祈ってうどんなど、麺を食べる習慣があるのだ。ただし中国は広い国なので、地方により、食べる順番などは変わる場合もある。

さて、讃岐から生まれ出た「年明けうどん」。名前のゴロもいいし、紅白だからおめでたいというシンプルな設定も、わかりやすい。こういうことは、わかりやすさが大切だ。ぱっと見て、「お、いいね」と思えば、それだけでみんなが明るい気持ちになれる。

「年明けうどん」の名前は、さぬきうどん振興協議会に申請すれば、誰でも使うことができる。右の写真は、『さぬき麺業』で普段人気の、「かまあげうどん」。

そこで「年明けうどん」、何を具に乗せるのが一番「年明け」らしいだろうか。 「さぬきうどん振興協議会」の提案では、基本的には赤いものであればなんでもいいとのこと。梅干しや人参、サクラエビなど、思いつくものはいろいろある。今年は「年明けうどん」を応援しようと、麺の具を専門に作っている会社が、赤い油揚げを新発売するなど、うどんの周辺まで活気付いているようだ。

何はともあれ、年明けうどんを食べてみよう。
 大正15年に開いたうどん店が、今の店の前身だという老舗、「さぬき麺業」の暖簾をくぐった。

つややかな肌の、美しいうどんが運ばれてくる。あたりに漂う「イリコだし」の香りが食欲を刺激する。太いうどんをすすり込むと、口の中で、まるで生き物のように跳ねる。コシの強い麺と、イリコだしの風味。そして醤油の懐かしい旨味。どれひとつが欠けても完成しない、これが讃岐うどんの醍醐味だ。

香川県高松市の繁華街に位置する『さぬき麺業』の店舗。創業80周年の歴史を誇る。

この年明けうどんを、たくさんの人に広めるには、みんなが食べたくなるような、美味しいメニューを提案することが重要だ。見た目も楽しく、華やかに工夫したい。明太子やイクラとの組み合わせも美味しそうだし、赤くて丸い餅を入れる「力うどん」も一興だろう。

新しい年、人が幸福を感じるために、そう多くのものは必要ない。大切な人の笑顔が目の前にあって、一杯の「年明けうどん」があれば、きっと元気が出る。目標に向かって、力強い一 歩を踏み出すことができるに違いない。

さぬき麺業 兵庫町店【本店】
香川県高松市兵庫町11-9  087-851-5090

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