《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

新横浜
ラーメン博物館の
人気ラーメン


第四十一回 片山虎之介

新幹線の停まる新横浜駅から徒歩約5分の場所に、「新横浜ラーメン博物館」がある。日本中、いや世界のラーメン店の中から選りすぐりの人気店が、この博物館に入っている。「新横浜ラーメン博物館」を訪ねれば、居ながらにして、これら各地にある人気ラーメンの味を楽しむことができるのだ。

「新横浜ラーメン博物館」の地下には、昭和33年ころの懐かしい町並みが再現されている。いわゆる三丁目の夕日の世界だ。東京タワーが完成し、一万円札が初めて世に出た、希望とロマンに満たされた、あの時代の町に立つことができるのだ。

この仮想の町には、9軒のラーメン店が軒(のき)を連ねている。

今回は、その中の一軒、『龍上海(りゅうしゃんはい)』を訪ねてみた。

この店は山形県の、温泉で知られる赤湯にある、味噌ベースの「赤湯からみそラーメン」で、ラーメン好きには良く知られた人気店だ。ラーメンの真ん中に、でんと置かれた赤い味噌の玉があることから、一目で「赤湯からみそラーメン」であることがわかる。

山形県赤湯、『龍上海』本店の創業は、昭和33年。当初は、普通の中華そばの店だったが、その売れ行きは芳(かんば)しくなかった。店で売れ残ったラーメンのスープがもったいないからと、まかない用の味噌汁に転用したのが、ヒットメニューが生まれるきっかけとなった。

食べてみると、意外に美味しい。そこで唐辛子やニンニクを入れた味噌玉を乗せ、「からみそ中華」として売り出した。昭和35年のことだ。

このラーメンの人気が高まり、今では全国に知られるまでになった。

『龍上海』の基本メニューは、赤湯からみそラーメンと、醤油味の赤湯ラーメン。美味しさの秘密を、二代目・佐藤春美さんは、次のように言う。

「うちのラーメンには、特別な材料は何も使っていません。たとえば国産の有名ブランドの小麦も使っていませんし、どこかの名水も使っていません。創業当時、近所の業者さんから仕入れたものと同じ材料を、今も使い続けています。その中で、どうしたら美味しいラーメンができるかと、工夫を積み重ねて、皆さんに喜んでいただける味を守ってきたのです。とにかく毎日食べても飽きないラーメンを作りたい。私たちは、まかないにこのラーメンを毎日食べていますが、飽きることはありません。だからお客さんも食べ飽きずに、何度も足を運んでくださるのです」

山形県赤湯にある本店から、ここ「新横浜ラーメン博物館」に、麺は宅配便で届けられる。「その日の朝の、打ち立ての麺がいちばん美味しい」という主人は、「新横浜ラーメン博物館」からの出店要請を何度も断った。麺の美味しさが、維持できるかどうか不安だったからだ。

しかし、テストを繰り返した結果、注意深く管理すれば、本店とほぼ同じ味を提供できることがわかった。それで「新横浜ラーメン博物館」への出店に踏み切ったのだという。

「新横浜ラーメン博物館」に入っている店は、どの店もそれぞれに個性的だ。新横浜を訪ね、一軒一軒の物語を楽しみながら、9つのラーメンの世界を堪能していただきたい。


龍上海 横浜店
神奈川県横浜市港北区新横浜2─14─21
電話 045─471─0503

トップページへ トップページへ