《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

きれい、美味しい、愛想がいい
この三つが繁盛店の基本


第六十三回 片山虎之介

約束していた時間、午後2時過ぎに店を訪ねたが、まだ店内は満席の状態だ。大きな駐車場も車でいっぱい。平日なのに、この混みぐあいなのだから、休日はどんなことになるのだろう。

 厨房の奥から現れたご主人、原勉さんは、次のように語る。

 「これでも一時期に比べると、お客さんの数が減ったのです。以前は、休日は昼に300人、夜に300人ぐらいのお客さんが来てくださいました。いちばん多かったのは、一日に760人。今は平均して、一日350人ぐらいに落ち着いています」

 お客さんの8割から9割が注文するという、驚異的な人気メニューがある。

 「日替わりランチ」780円。「うちの店の生命線です」と原さんが言う、大切なセットメニューだ。なぜ、これが、そんなに売れるのだろうか。

 

原さんは、次のように説明する。

 「私は店を始めたころ、うどんは貧しい人の食べ物だと思っていたのです。だからメニューの中で、脇役として設定しました。主役は、ご飯です。私はご飯を売りたかった。うどんは売れないと思っていたから、赤だしの代わりというぐらいのつもりで、ご飯に付けて出したのです」

 ところが売り出してみると、これが大当たりしたのだという。常連客が、毎日、「日替わりランチ」を食べる。「きょうは何?」と、日替わりのおかずの内容を知らないまま注文して、出されたおかずを楽しんで帰る。

 そんなお客さんの心理を、原さんは次のように分析する。

 「毎日、同じものを食べたら、 人間、絶対に飽きます。仕事をしている人が、昼食として食べるなら、やはり主役はご飯でなければ物足りないでしょう。そ こに、赤だしがわりにうどんを提供できるのは、うどん屋の強みです。通常の一杯までは要らないから、少しだけ、うどんの味も楽しみたい。それがお客さんの本音なのだと思います」

 人気のセットを味わってみた。

 まず、うどんから。最もシンプルなメニューだというが、これが美味しい。醤油は白醤油と濃口、それにたまり醤油もブレンドしているとのこと。たまり醤油の独特の個性が、隠し味のように効いて、箸が止まらない。

 ご主人の原さんが、「ご飯が売りたかった」というだけあって、ご飯も素晴らしい。海老フライなどの日替わりのおかずと交互に味わって、完食させていただいた。これで780円という値段は、驚異的だ。

 セットメニューに比べれば注文数は少ないというが、通常のうどんメニューも、どんぶりが大きくてボリュームがある。

 「セットではない普通のうどんは、白玉の状態で300gです」と原さん。食べて満足できる食事とは何かを、いつも考えている。

 料理はおいしくて食べごたえがあるが、原さんが最も気を遣うのは、店の総合的な魅力を増大させることだ。「きれい、美味しい、愛想がいい、これが基本中の基本」だという。お客さんに満足してもらう店にするため、原さんは、店に入るときは、 頭のスイッチを切り替える。どんなに疲れていても、しかめっ面は禁物だ。大将がニコニコしていれば、その雰囲気は必ず従業員に伝播する。それが店の雰囲気となり、お客さんを、また訪れたいという気持ちにさせるのだという。

 いつもお客さんの満足のために気を遣う原さんの努力の積み重ねが、『そば源』の繁盛の原動力になっている。



そば源
愛知県豊橋市植田町上リ戸1─2
電話 0532─25─3331

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