《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

ハレの日の食事をしてもらう店


第六十九回 片山虎之介

人の顔立ちや服装を見れば、その人がどういう人であるのか、ある程度、判断できるのと同じように、店も外観、たたずまいに、その店の個性が表れる
ものだ。

東京都府中市にある『季創りそば・膳 奈美喜庵』の外観の写真をご覧いただいて、この店の目指しているところが、お分かりいただけるだろうか。建物は大きく、駐車場も広いスペースが確保してある。いかにも人が集まりやすそうな店に見える。

主人の井上米次さんは、店の特徴を次のように語る。

「創業は昭和46年ですが、平成19年に建て替えて、新装オープンしました。そのときに、宴会を重視した店作りに切り替えたのです。お祝い事など、ハレの日の食事をしていただく店にしようと、蕎麦に、日本料理も取り入れ、四季の食材を使って、お客様に楽しんでいただける料理を提供できる店にしたいと思ったのです」

日本料理は、二代目、井上誠一郎さんが、都内の日本料理店で修行を積んで腕を磨いた。

膳で提供するセットの料理が基本だが、単品の蕎麦も、気を緩めることなく、工夫している。

「蕎麦は、並粉では満足できずに、自家製粉をしています。さらにおいしい蕎麦にしたいと思い、今は、自家製粉した粉に、製粉屋さんに依頼して作ってもらった粗挽きの粉を2種類、ブレンドしています。蕎麦の産地は、北海道の北空知と、茨城県です。仕入れ値は少々かさみますが、国産の蕎麦粉を使っています」

『季創りそば・膳 奈美喜庵』の人気商品、「瓦そば」をいただいてみた。

細切りで、まばらに、淡い茶色のホシが飛んでいる。盛り付けた様子は、蕎麦の麺が、へたることもなく、しっかりした腰があることをうかがわせる。

 

蕎麦を一箸つまみ、口に運ぶと、豊かな香りを感じる。食感も、適度な腰と、もちもち感がある、見事な蕎麦だった。

今は、お客様の数が多いので、機械打ちでなくては間に合わないというが、製麺機を使いこなし、蕎麦の風味を、きちんと引き出していると感じた。

日本料理も食材の選び方や料理の種類を考えて、見栄えが良くて、できるだけ手のかからない構成にしている。

井上米次さんに、こういうスタイルの店を運営するうえで、注意しなければいけない点を聞いてみた。

「商売は、何でも同じだと思うのですが、お客様が何を求めているのか、それを知ることが大切ですね」

では、今のお客様は、何を求めているのかと、さらに尋ねる。井上さんの答えは、次のようなものだった。

「料理のおいしさを求められるのは、言うまでもないことですが、同時に、今のお客様は、ほっとできる、憩いの場のようなものを求めていらっしゃるのだと思います」

その判断に沿って、建物を造り、料理の構成を考えていくと、今の店の形になったのだという。

お客様がこの店に集まる目的は、七五三のお祝いや、誕生日、喜寿、米寿のお祝いなど。法事のお客様も多い。

女性客が、このごろ特に増えてきて、テニスのグループや、カラオケの会、ダンスの集まりなどに利用してくれるという。

求めるものが、ここにあるから、お客様は今日も、『季創りそば・膳 奈美喜庵』の暖簾をくぐり、この店に集まってくれるのだ。


季創りそば・膳 奈美喜庵
東京都府中市西府町2-29-5
電話 042-362-8462

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