《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

白石うーめんに
パワフルな味の新世界


第七十八回 片山虎之介

宮城県の白石名物「白石うーめん」は、その名をご存じの方も多いだろう。そうめんに似た食べ物で、作る際に、油を用いないことが、そうめんとの違いだ。いわば、そうめんよりさらに、淡白なイメージを持つ食べ物である。

白石市の『関東家』は、うーめんで知られる店。創業は明治31年に遡るという老舗だ。

『関東家』は、今、うーめんの世界に、静かな革命を起こしている。あっさりして地味な食べ物と思われているうーめんが、『関東家』のメニューに載ると、パワフルで現代的な食べ物に一変するのだ。

平日の客は地元の人たちがほとんどだが、土、日になると、県外など遠方から、この店の うーめんを求めて訪れる客で、席は埋まる。

交通の便は良くないし、店の様子も地味だ。目立つようなパフォーマンスもないこの店に、なぜ客がそんなに惹きつけられるのだろうか。

その答えは、料理を食べてみるとわかる。『関東家』のメニューには、外れがない。どのメニューを味わっても美味しいのだ。

主人の岡ア隆志さんは、毎朝、仕込みを終えた店で出す料理を、自分で食べて朝食にする。 必ず、毎朝、そうするのだという。
「お客さまに召し上がっていただく料理ですから、責任と自 信を持って作りたいのです。自分で食べて納得できて、初めて 店でも出すことができます」

いちばん人気は、「カレーうーめん」。独自に調製したカレーを、温かいうーめんにかけて供する。この味に魅せられて、遠方から通うリピーターも多い。
カレー専門店から、カレーの作り方を教えて欲しいと、請われたこともあったという。

「カレーうーめん」と肩を並べて人気なのが「煮干し肉そば」。こちらは、冷たいものと、温かいものと二種類あって、冷たいメニューは通常、蕎麦を合わせて、つけ蕎麦のスタイルにする。温かいメニューは、うーめんを台にする。汁の味は、冷たいものと温かいメニューでは、微妙に変える。

これらのメニューに使われるのは、店で仕込んだ蕎麦つゆだ。鯖節やそうだ節をベースに使い、煮干しの旨味も生かしている。

どこの真似でもない、オリジナリティーに富んだ味だ。淡白な味の食べ物と思われていたうーめんが、この汁で劇的に変わる。病み付きになる人が後を絶たない、魅力的な食べ物になるのだ。

出汁をとるのに使う節類は、削った状態ではなく、節のまま仕入れて、毎日、必要な量を削って使う。季節や天候により、節を混ぜる割合も変える。

マスコミに派手に取り上げられることもない、地方の町の目立たない店だが、客は、その本質を見抜き、続々と押しかける。

 『関東家』は、麺の世界に新しい時代を切り開く、大きな可能性を秘めた、隠れた名店といえるだろう。


関東家
宮城県白石市字長町29
電話 0224─26─2671

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