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第3回 池部良さん(俳優)

めん類は何でも
好きですね。

第3回
池部良さん(俳優)

池部 良
俳優。1918(大正7)年東京生まれ。
父は画家池部均。岡本太郎とはいとこ同士。立教大学卒業後、東宝に入社。兵役で大陸と南方の島に出征。49年の「青い山脈」以後、多くの映画に出演。90年代から多くの随筆で高い評価を得ている。

食べ方にも親父の影響があるかな。

― 映画の中で池部さんがそばを食べる場面があまりに格好いいので、一度お話をうかがってみたいと、今回のインタビューをお願いしました。めん類を含めて、どんな食べ物がお好きなんですか?

池部 ぼくはいわゆるグルメじゃありませんから、うまいものはうまい、まずいものはまずい、と言っているだけの話です。

― ご著書『煮たり焼いたり喋ったり』(中公文庫)の中にブータンのかぼちゃそばの料理法をお書きになっていらっしゃいますが。煮たカボチャをすり潰して温かいそばにかけるという。

池部 ブータンへ行ったわけではないんですが、人に聞いてつくったんです。ざるそばとおなじようなものだけど、うどんのように麺が太い。ところてんをつくるような 道具で麺を力を込めて押し出す。それをゆでて食べる。あちらでは比較的ごちそうの類のようです。

― 池部さんにとってめん類という食べ物は食生活の中でどんな位置にありますか?

池部 めん類、特にそばは好きです。ただ、なかなか食べる機会がなくて。グルメではないが、評判のそば屋には行ってみたいでしょう?
それが仕事などで行けない。たまたまぼくの遠縁に当たる、銀座のよし田というそば屋にはよく行きました。

― コロッケそばで有名なよし田ですか?

池部 そう、昔からいわゆる東京風のそばを食べさせる品のいい店です。

― 温かいそばと冷たいそばとどちらがお好きですか?

池部 もりなどの冷たい方が好きですね。ぼくは猫舌で、熱いのはだめなんです。一気にすすりこめないので。

― 映画で拝見した池部さんのそばを食べる場面は、背筋を伸ばして実にきりっとしていました。

池部 そばの食べ方を親から教わったわけではないけど、親父がそば好きで。子供時代大森に住んでいたころ、道を隔てて近くにそば屋があった。六、七〇年も前の話ですが、大げさに言うと三日に上げずそこからそばをとった。親父は海苔のかかったざる、おふくろと僕ら兄弟とお手伝いさんはもり。しかも僕と弟は一枚を半分ずつ、おふくろは二枚。たまに天ぷらそばをとっても、子供には贅沢だと言って食べさせてくれない。
ある時、中学からの帰り道、そのそば屋の醤油と鰹節の匂いをかぎながら通ったら、店の女の子が「ぼっちゃん」と呼び止めるんです。そして「いつもそばを取っていただいているから」と言って、遠慮する僕にてんぷらそばをおごってくれた。これがすごくうまかった。海老が残ったので、尻尾をつまんだらぽろっと抜けた。すると「それはお飾りなんだからひっぱっちゃだめだよ」。(笑)

― うまいと思ったのは汁を吸った衣だったんですね。

池部 親父は好きだし尊敬していますが、妙にうるさい人で、しょっちゅう何か言われ、それが影響してるかも。そばは七、八本を箸でつまんで食べるもんだ、汁をたっぷりつけて食べると「ばかやろっ」としかられた。それに、ぼくはそばを塊ですくって汁をどっとつけて食べるのは口も小さいせいか出来ませんね。親父は「三口半で食べろ」と言ってましたが、そばの持ち味、のど越しなどを味わうにはあまり噛まない方がいいように思います。

戦争中、南の島で夢にまで見たラーメン。

第3回 池部良さん(俳優)

― ラーメンなどはどうですか?

池部 ラーメンも大好きです。これは親父の影響は全くない。終戦直後に中国人から中華料理のうまさを教えられました。ラーメンの味としては昔ながらの醤油味が好きです。

― 今でも結構お食べになる?

池部 食べますね。終戦までの二年半、南の島で兵隊として暮らしましたが、終わりのころは食べ物がなくて往生した。自分は隊長だったので、部下より先に食べるわけにいかない。我慢するから食べ物の夢を見る。飢餓状態の夢で出てくるのがラーメンとトウモロコシ。トンカツとかビフテキなんかは出てこない。脂っこいものに飢えているのに、ラーメンでした。

― スパゲテイもお好きですか。

池部 好きですが、アルデンテというゆで方はだめだなあ。よくゆでたやわらかめの方がいい。スパゲティも、あまり噛んで食べるものじゃないと思います。日本人は周りの意見に弱いから、それが伝統だといわれて、うまいと思ってしまうんだな。

― そばとラーメンとでは、やはりラーメンがお好きですか?

池部 比較できるものじゃないと思いますよ。そばもラーメンも、どちらもそれぞれ好きですからね。そばの汁は、あっさりして少し甘い方が好きです。

― 最近は手打ちに凝ったりする店が増えていますが。

池部 いろいろ凝るのはいいことだと思います。しかし、注文などで押しつけられるのは困る。以前評判の店があるので訪ね、そばとお酒を注文したら、お品書きにあるのに「酒を飲まれるんですか」と、あまりいい顔をしない。そんなに肩ひじ張らなくてもいいと思うんですが。

(‘06年5月11日・ご自宅でインタビュー)
撮影/ STUDIO MAX 高橋昌嗣




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