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第7回 吉永みち子さん(エッセイスト)

そば好きは父の影響
かも。

第7回
吉永みち子さん(エッセイスト)

吉永みち子
ノンフィクション作家。東京外語大学インドネシア語学科卒業。競馬専門紙「勝馬」で日本初の女性形馬新聞記者となり、その後「日刊ゲンダイ」記者を経て、1977年に当時の騎手吉永正人氏と結婚。85年『気がつけば騎手の女房』で第16回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。地方分権改革推進会議、郵政行政審査会の委員なども務める。

食い道楽の父との
食べ物の思い出

― 吉永さんは、そばがお好きということですが。

吉永 めん類は何でも好きです。日本人は一般的にめん類が好きですが、私は、特に外国へ行ったとき、無性にツルツルしたものが食べたくなる。

― めん類には、そば、うどん、ラーメン、パスタなどいろいろありますが、特に何が好きですか。

吉永 特に、どのめんということはありません。ただ、小さいときに「そばが好き」と言うと、何か大人っぽくて、カッコ良くて、「うどんが好き」と言うと、子ども扱いにされたような気がする。それが気に入らないので、「そばが好き」と言っていたんですが、本当はそのころ、うどんの方が好きでした。本当にそばがおいしいなと感じだしたのは、四〇代になってからだと思います。

― そうすると、子どものころから、おそばを食べていたわけですね。

吉永 無理して食べていましたよ(笑)。私が小学三年生のときに、父が亡くなり、外食をしなくなりましたが、健在のころはよくお店に行きました。父親がとにかく食い道楽の人でしたからね。私は子どもで、ざるともりの区別もつかなかった。

― お父さんとのそばの思い出はありますか。

吉永 いろんな食べ物に父との思い出が絡んでいます。そば屋さんで私がそばを頼むと、父は喜びました。ですから、私もそばが好きだと言い続けた方がいいかな、と思ったわけです。父の味覚を母よりもずっと信用していたし、外で食べ物屋さんに連れて行ってくれたのは父でしたから。それに、父は料理をつくるのも好きでした。お客様が来ると、母ではなくて父が料理をつくるんです。

― お父さんは、料理関係のお仕事をされていたのですか。

吉永 いえ、ただ食べることが好きだったようです。上野のアメ横に行ってスパイスを買ってきて、石臼で挽き、小麦粉を炒めて、本格的なカレーをつくったり。母はもっぱら煮る・焼くの担当でした。ですから、母がつくる天ぷらと父がつくる天ぷらは、全然別物でした。父は、母のつくった天ぷらを「野菜団子」と言っていました。母は乾麺を買ってきて、父がつくった天ぷらの天かすを使って、「これを入れると、すごくおいしい」と。それが後で、たぬきそば、たぬきうどんだと知ったんです。

鹿児島の家庭の味
ユニークなかけそば

第7回 吉永みち子さん(エッセイスト)

― よくそば屋でお酒を飲まれますか? そば屋の肴はいかがでしょう。

吉永 日本酒をよく飲みますよ。最後にそばで締めるので、板わさとか、海苔を焼いたりとか、キュウリに味噌とか、軽い物でいい。卵焼きは甘いのが苦手なので、頼む前に甘くないかどうか確かめて注文します。

― そばをご自分でつくったことはありますか。

吉永 家でそば粉を買ってきて、十割そばをつくったことはあります。でも、すぐ食べてもらわないと。年越しそばをつくったときは、子どもたちはスプーンで食べていましたね(笑)。ぶつぶつになって、はしでつまめないとか言って、諦めました。

― 外で食べたそばで、印象に残ったものはありますか。

吉永 以前、夫の実家の鹿児島へ行ったんですが、鶏の骨でかけそばのだしを取るんです。地鶏の一羽分ぐらいをつぶしてコトコト煮る。脂をすくいながらだしをつくる んですが、そんな脂っこいそばは初めてでした。でも、これがおいしかった。アサツキをたくさんかけて、桜島の小ミカンの皮を細かく刻んで薬味に入れる。良い香りがして、アサツキの緑にオレンジ色の皮が鮮やかです。

― 鹿児島で食べたそばは、お店ではなく、家でつくったものですか。

吉永 お店じゃ多分、これと同じ物はないんじゃないかしら。それに、鹿児島はラーメンの印象が強く、そば屋はあまり見たことがないですね。しかし、意外にも鹿児島はソバの生産が多い県で、30年ほど前に大隅半島に行ったとき、一面のソバ畑を見ました。ですから、あちらでは自宅でそばを打って、かけそばをつくっているわけです。

おいしい、まずいは、
自分の感性、舌で判断

― そばにもいろんなメニューがありますが。

吉永 やはりもりですね。猫舌なので熱いそばは苦手なんです。だからといって、冷めるのを待っているわけにいかないし。

― そば屋に望むことはありますか。

吉永 妙にうるさいそば屋と、雑ぱくなそば屋の二種類が目立つような気がするんです。うんちくはいいけど敷居が高い。かしこまって、緊張して、そばを食べたいとは思わないですね。それに、相席で、機械的な扱いを受けるような店もイヤですね。また、閉まる時間が早い。もう少しのんびりできる雰囲気がほしいですね。そば粉にしても「国産」を看板にしているのに、実は外国産だったり。別に外国産だって、おいしければかまわないと思うけど。

― 今は国産二割、輸入八割になっていますね。

吉永 国産を食べれば通だというのは変ですよね。うんちくを傾けるそば通の人が多いようですが、おいしい、おいしくない、といったこととうんちくは別です。自分の舌で、口に合うか合わないかを判断すれば良いのではないでしょうか。外の意見に盲従しないで、自分の感性を大事にすべきです。味覚は、個人の感覚ですから。

(‘06年8月14日、八芳園「スラッシュカフェ」にてインタビュー。
〒108-8631東京都港区白金台1-1-1八芳園 電話03-3443-3111
東京メトロ白金台駅より徒歩3分)
撮影/ STUDIO MAX 高橋昌嗣




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