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元旦でも朝からトースト
― 歌舞伎役者の正月というのはどんな感じですか。 片岡 元旦は、まず松緑さん(四代目尾上松緑)のお宅へ新年のごあいさつに行き、それから音羽屋さん(七代目尾上菊五郎)や成田屋さん(十二代目市川團十郎)、役者仲間、ご贔屓(ひいき)筋を回って、最後はだいたい勘三郎さん(十八代目中村勘三郎)のところです。 ― 新春公演もすぐ始まりますね。 片岡 国立劇場の場合は1月3日初日ですから2日は稽古。初日にいきなりテレビ生中継もあります。本当に体に悪い(笑)。ですから、正月だからって飲んではいられないんです。 ― 大晦日はどうしているんですか。 片岡 我々は12月31日は必ず休みなので、30日は学生時代の友達と毎年、大宴会。そうすると31日はほとんど使いものになりません。だから、人には会わない! ― 片岡家の正月料理で何か決まっているものはありますか。 片岡 特にないですね。僕は4、5歳のころから、元旦は朝から車に乗せられ20軒くらい年始回りに連れて行かれました。うちのおやじさん(五代目片岡市蔵)は呑ん兵衛ですから、「ちょっと寄っていくか」と声をかけられると上がって一杯飲むでしょ。そうすると「まあお子さんも一杯だけ」って飲まされるんですね、おちょこ1杯とか。それで必ず車酔いして戻すんですよ、朝一番に食べたお雑煮を。だから僕は小学5年生のころからお雑煮は食べなくなりました。 ― では、正月は何を? 片岡 朝は必ずトーストです。 酒にも肴にも微妙なこだわりがある― お酒は結構、お好きですか。 片岡 日本酒は次の日のことを考えると、やはり抑え気味になりますね。でも、「このウルメを炭で焼いてね」となったら、日本酒ですよ。そこで焼酎やカクテルなんて飲めないでしょ。だけど、日本酒は何時間も飲んでいられませんから、「もうちょっとつまんでたいな」と思うときは焼酎に切り替えます。 ― 家で飲むのと、外で飲むのはどちらが好きですか。 片岡 地方公演の後は、うちで飲むのが面白いですね。「お〜い」といえば、何でも出てくるからね(笑)。 ― つまみはどんなものを? 片岡 ウルメとか子持ち昆布とか。刺身があるといえば、日本酒もいいけど白ワインを開けてみようか。生ハムを買ってきたと聞けば、じゃあ赤ワインにしようかって。 ― いろいろなお酒を飲むんですね。僕は日本酒ばっかりです。 片岡 日本酒を飲むのはたっぷり眠れるときですね。だいたい、飲んだ時間の3倍寝ろっていいますから。 ― 食べ物の好き嫌いは? 片岡 割と多いですよ、シソやショウガなど、香り物は苦手です。 ― 山椒も? 片岡 ダメですね。京都では、うなぎなど最初から山椒がかかって出てくることが多いですけど、お箸でよけちゃいます。でも、中国山椒は大丈夫です。あれがなければ麻婆豆腐はおいしくないですから。微妙なところにこわだっているんです。 ― 麺類はどうですか。 片岡 地方公演に行って出前なんかが続くと、「神田の藪行ってそば喰いたい。上野の藪の辛味大根そばで日本酒飲みたいな〜」ってよく思います。そばのうまいところはあるんです。でもつゆがね。あと、ちょっと小ぶりの丼で鴨南なんかを食べさせてくれるといいんですけど。 ― 昔のそば屋は、みんな丼が小さかったですよね。 片岡 そう、お茶漬けにするくらいのお椀でしたよ。丸っこい感じで、ゆずがちょこっとのっててね。でも、僕はそのゆずは捨てちゃうんですけど(笑)。 わが家は小料理屋片岡です
(ここで“亀嫁さん”こと、奥様の明美さんが飛び入り参加) ― かなりお酒を飲まれるようですね。 亀嫁 そうなんです。毎晩、5時間くらい。一般のご家庭って、晩ご飯をそんなに長く食べませんよね。しかも、テレビを見ているわけでもありませんし。 ― 何をしているんですか。 亀嫁 一品ずつ料理をつくってしゃべっているんです。いい女将でしょ。 ― ホントだ。歌舞伎役者と結婚して、いかがですか。 亀嫁 ものすごく厳しい世界だと思って覚悟してきましたが、女子アナ時代(元福岡放送のアナウンサー)の方が大変だったかな。 ― どういう厳しさを想像していたのですか。 亀嫁 ご贔屓筋とか同業者とか、ものすごくしがらみが多くてキュウキュウな生活をするのではないかなって。でも、非常に毎日楽しく過ごしております。 片岡 それは旦那さんがちゃんとカバーしているからでしょ。 ― そりゃそうだ(笑)。日ごろから気遣っていることなどありますか。 片岡蔵 とくかく健康第一、これしかないですね。
新しい歌舞伎のカタチをじっくりつくっていきたい― 最後に、四代目片岡亀蔵として、これからどんな役者を目指していきますか。 片岡 そうですね、歌舞伎の世界も昔と随分変わり、コクーン歌舞伎やシネマ歌舞伎、海外公演もあったり。野田秀樹さん、三谷幸喜さん、宮藤官九郎さんはじめ、いろんな方が演出を手がけるようにもなりました。生きている作家の作品を演じるなんて、昔はできなかったですからね。新しい人たちの考えを歌舞伎に取り入れて、どういう化学反応が出てくるか。時間はかかると思いますが、10年後、20年後、熟成してとってもいいカタチになるのではと思っています。今、勘三郎さんとの芝居が多いので、そういった体験が自分の血となり肉となっていけばいいなって。それと同時に、全然違う、うちのおやじさんがやってきたような伝統的なこともやっていきたいですね。僕は兎と亀じゃないですけど、じっくりやっていきたいな。こぼすことなく、周りを見ながらね。その方がお客さんにとってもやさしい芝居になるんじゃないかな。 (09年11月02日「吉野鮨本店」にて収録)撮影/ STUDIO MAX 高橋昌嗣 |
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