そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

老舗の味を受け継ぎ
本格そば店として認知

 1892(明治25)年創業の『上野やぶそば』は、『神田やぶそば』から最初にのれん分けした老舗として知られる名店だ。
 『上野やぶそば』で約30年間修行を積んだ西海(にしがい)直克さんが、2013(平成25)年に独立し開業したのが『そば切り やぶ』だ。

『そば切り やぶ』の店舗内外観。外観はもとのそば店のものを活用している。内装は白を基調とした清潔感のある仕上がりになっている。一部には前店舗の建具を残し、新しさの中に懐かしさを感じる。新型コロナウイルス感染症の対策として大型の空気清浄器を設置している。
『そば切り やぶ』では、様々な酒肴で「そば前」を楽しむことができる。
 当初は、JR山手線・大塚駅に近い折戸通り沿いに店を構え、店名を『おり戸 そば切り やぶ』として営業していたが、借りていた店舗の関係で一旦閉店、2020(令和2)年に、JR山手線・都営三田線巣鴨駅から歩いて5分ほどの豊島市場の先に移転・リニューアルオープンした。最初の店も、現在の店も元そば店の店を改装して利用しているが、現店舗は内装・調理場をほぼ完全に改装を実施し、新型コロナウイルス感染症の影響も大きい中、営業を再開した。
 大塚での開業当初は駅から離れており、人通りも決して多いところではなかったが、『上野やぶそば』で修行した店主が打つ手打ちそばが評判となり、着実に来客を増やしていった。現店舗も駅から距離があり、中山道から少し入った場所だが、常連客が来店してくれる。
 西海さんは「土日はお客様の数がかなり多いですね。前に店に来ていただいていたお客様が、今の店の近くに住んでいる方が多く、引き続きご愛顧いただいており感謝しています」と話す。
初夏から夏場に向けて評判の良い「みょうがとナスのぶっかけそば」。刻みみょうが、素揚げしたナスに大根の千切りも入り、さっぱりと食べることができる。
幕末発祥といわれる「おかめそば」。江戸そばの伝統を受け継ぐ品もしっかりと提供している。
季節を問わず人気がある「イカ天おろしそば」。別にそば猪口も用意され、つゆをつけて食べることもでき、そば湯も楽しめる配慮がされている。
 『そば切り やぶ』のそばは、伝統の江戸そばだ。そば粉はその時々で状態の良いものを複数仕入れ、打ちやすさや味を考え、ブレンドして使用する。そばは細く、喉越しが良いように仕上げる。老舗で永年修行した技が発揮され、お客様は多少不便な場所でも、本物のそばの味を目指して来店される。
「独立してみて、『上野やぶそば』の鵜飼(良平)会長が業界にものすごく貢献されていることも良くわかりました。また、田中(秀樹)日麺連会長にもお世話になっています。修行で学んだことを守りながら、自分らしさも出して、美味しいそばを提供してゆきたいと考えています」と、西海さんは、伝統と新しさを融合させた、自分なりの店づくりを今後も続けたいという考えだ。
 店の品書きにもこうした考えが繁栄されており、基本的な品をきちんとした形で提供することに加え、自分で勉強した品を導入し、メニューの幅を広げている。しかし、際限なく広げるわけではなく、基本の仕事が疎かにならないようにしていることが、お客様にも理解されているのだろう。
<店舗twitter>https://twitter.com/yabu_sugamo5

そば切り やぶ

東京都豊島区巣鴨5-10-3

03-6903-6536