そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

階上早生の白いそば
店の伝統を守る五代目

 江戸時代、南部氏の所領だった南部地方は、現在の青森県・岩手県・秋田県にまたがる広大な地域であった。その一角を占めていた鹿角市は3県の県境地域にある。当地において明治時代から商売を始め、その後食堂となり、現在はそば専門店として営業するのが『南部手打そば総本舗 切田屋』だ。
 4代目主人・切田利明さんは若くして亡くなり、利明さんの妻・潮子さんと、5代目・昌吾さんがのれんを守っている。「商売を始めた当初は色々なことをしていたそうです。大正時代くらいから食堂として営業し、東京で修業した主人が店に戻った頃からそばを中心にした営業になりました」と潮子さんは話す。

平成3年に建て替えた現店舗は店の入り口に打ち場を配し、テーブル・座敷など席数も充分ある。
 十和田湖地域で栽培された階上早生の一番粉を使用したそばは、白く、上品な味わいに仕上がっている。つながりの弱い一番粉を手打ちで提供するのは簡単ではないが、通常メニューに使用する二八そばの他に数量限定で十割そばも提供する。当初は一番粉のみで打っていたため、一見すると二八そばと見た目があまり変わらかなかったため、粗挽粉を加えて特徴を出すようにした。
 また、30年ほど前から始めた「しぼり大根そば」は、鹿角市・松館地域のみで栽培される「松館しぼり大根」(辛味大根)のしぼり汁をつゆに入れて食べるそばで、季節限定ということもあり、人気商品となった。100年以上の歴史を持つ「松館しぼり大根」は一時期は栽培が減少していたが、今年、林水産省の「地理的表示(GI)保護制度」の対象になり、鹿角市では初めて登録された。
 地元のお客様には手頃な価格で楽しめるランチメニュー(5種類)が好評で、宴会や仕出しなども受ける。観光客も多い場所柄、銘柄鶏・比内地鶏を使ったメニューや鹿角地域が発祥とされる郷土料理「きりたんぽ」も提供している。
 
9月から冬期まで提供する「しぼり大根そば」は当店の看板商品。お客様自身で辛味大根をしぼり、しぼり汁をつゆに入れて食べる。
「十割もりそば」をはじめ、十割そばは1日15食限定。粗挽粉がアクセントになっている。
観光客に地元の味を提供する「比内地鶏せいろ」。比内地鶏独特のしっかりとした食感と風味を堪能できる。
 「様々なことに取り組まないとこの場所で商売をするのは難しいですね。かつては小坂鉱山の関係者が多かったですが、最近は観光客、特に外国人のお客様が増えてきていますので、その対応も必要です」というのが店を取り巻く現状だ。こうした中でも、代々受け継がれるそばと店を代表する商品、何よりもこれから店を託すことができる若い5代目の存在が大きい。地域を代表するそば店だけに、これからも店の味を守ってほしいと思う。

南部手打ちそば総本舗 切田屋

秋田県鹿角市花輪下花輪168

0186-23-2083