そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

伝統技法の「裁ちそば」を
親子で紡ぐ

 「裁ちそば」は、福島県桧枝岐村や南会津町の郷土そばで、十割で練ったそば玉をを小分にし、延し、たたまずに重ねて切る。布地を裁つように切ることから「裁ちそば」と呼ばれている。この伝統技法を守り、提供しているのが、福島市の『裁ちそば 紅葉亭』だ。周囲にはそば店が多く立地する地域で、果樹園の果物狩りなど、観光客の来客も多いが、「裁ちそば」を提供するのは『裁ちそば 紅葉亭』だけだ。

住所は福島市内だが、山形県との県境も近い地域に立地し、周囲にはのどかな風景が広がる。店内の大きな窓からも景色を眺めながら食事をすることができ、 天気が良い日はテラス席を利用することも可能だ。
 『裁ちそば 紅葉亭』は島崎邦昭さん・文恵さん夫妻が2002(平成14)に開業した。邦昭さんは、福島県警の元警察官で、退職の5年ほど前からそば打ちを始めた。喜多方市や山都町などでそば打ちを学び、その後、「裁ちそば」を提供する南会津町の『湯の花温泉 紅葉館』の主人・星林太郎氏に師事した。
 そば粉は南会津産の在来種と北海道新得産の玄そばを自家製粉して使用する。挽きぐるみの比較的粗めだが、十割で打つ。邦昭さんは「最初に水で水回しをして、そばの風味を閉じ込め、その後熱湯で湯ごねをします。それを小分けにして握り玉を作り、ビニール袋で少し蒸すような形にします」と話す。この独特の製法が、粗目のそば粉、十割でも切れにくいそばに仕上がる秘訣だ。
邦昭さんが延し、良子さんが切る親子共作の「皿そば」。十割だが、つながりも良く、喉ごしも良い。
数量限定の「裁ちそばの刺身」は、そばの風味と独特の食感がある一品。
鴨のつくねが入る「そばがき」。スプーンですくうと崩れるほど柔らかく仕上げている。薬味の柚子胡椒が良いアクセントになっている。
 『裁ちそば 紅葉亭』では、冷たい「皿そば」の他に「かけそば」「鴨南蛮そば」を提供するが、そばとつゆを別々に提供する。また、「そばがき」「あげそばがき」「裁ちそばの刺身」など、そばの風味を存分に味わえる一品料理の他、自家製のデザートも好評を得ている。
 昨年、妻の文恵さんが闘病の末に他界した。今年に入ってからは新型コロナウイルス感染症の影響など、多くの困難に直面したが、娘の良子さんが邦昭さんを支える。親子の絆で、伝統の郷土そばが守られている。
<店舗ホームページ>http://kouyoutei.com
「裁ちそば」の手打ち作業。2キロで打った十割のそば玉を10個くらいに分け、1つづつ、太目の麺棒で延す。それを重ね、包丁で切る。師匠直伝の細めのそばが『裁ちそば 紅葉亭』のそばの特徴だ。

裁ちそば 紅葉亭

福島県福島市在庭坂桃畑39

024-591-1785