そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

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頼れる後継者

 福島駅から車で10分ほど、交通量の多い国道4号線沿いに店を構える『阿武隈うどん 正伍郎』は、小山豊さんが1976(昭和51)年に『味のこやま』として独立・創業した。1980(昭和55)年に現在地に移転し、令和元年に店舗を新築したが、新装開店直後に火災に見舞われ、その後再建した。
 豊さんは「リニューアルした直後に火災が起きて意気消沈していました。でも次男(小山剛さん)の妻(小山明美)に励まされ、店を手伝ってもらったおかげで再建することができました。本当の娘のようで、店のことでは感謝してもしきれません」と話す。現在、『阿武隈うどん正伍郎』の経営を担うのは明美さんだ。明るい人柄で、知人などがパートとして働いてくれるなど、店の経営に大きく貢献している。明美さんは「店は父と、それを支えてきた母(小山喜世子さん)の2人の努力があってこそ今につながっています。その努力の結晶を守りたいと思っています」という。

『阿武隈うどん 正伍郎』の店舗内外観。入口は店の両側にあり、道路の両方向から店がよくわかる。座敷も全てイス・テーブルにしている。
 国道沿いには飲食店も多く、これまでに70数店舗が出店と撤退を繰り返しているという。こうした中でも『阿武隈うどん 正伍郎』が支持されるのは、豊さんが作り上げた専門店の味だ。創業当初は宴会などの仕出しが多く、その後も出前が多かったが、店売りに力を入れるようになり、本格的にうどんに取り組むようになった。本格的なうどんと、それまでに培ってきた料理の技術を活かし、昼夜問わず、様々な客層に対応できるようにしてきた。うどんは福島県産小麦を使用して打ち、つゆは温・冷で作り分ける。冷たいうどんのつゆはよく寝かせたかえしに鰹節・鯖節でとった出汁と合わせる。温かいうどんのつゆは出汁に白醤油・薄口醤油・みりんで味をつけており、いずれもうどんとの相性を考えて作っている。売れ筋だという天ぷらやトンカツも丁寧な仕事ぶりがわかる。こうした点がチェーン店との差別化につながっているのだ。
ソースカツ丼・天丼・海鮮丼のミニサイズとうどん(温・冷)がセットになったランチセットは昼の一番人気商品。
『月替わりで様々な変わり種を提供する。2月は「うどんグラタン」を販売した。
「天ざるうどん」は店の基本の味。
 今後の店の方向性を尋ねると、明美さんの息子・小山翔さんが店を継ぐ意思を示し、調理科のある高校を卒業し、現在はイタリア料理店で修業中だという。「イタリア料理でも和食でも何でも良いのです。店を継ぎたいと言ってくれただけでとても嬉しい」と豊さんは話す。努力を重ねて創業し、守り続けて来た店を、次の世代が担ってくれることは、創業者にとって何よりの喜びだ。
<店舗ホームページ>https://www.abukumaudon-syogorou.com

阿武隈うどん 正伍郎

福島県福島市本内中井40

024-554-0088