
栃木県小山市『浅野屋茂兵衛』
つなぎに海藻の布海苔を使い、つるつるとした食感が独特の「へぎそば」は新潟県の郷土そばとして良く知られている。新潟県から遠く離れた栃木県で、この「へぎそば」を店の看板商品として育てたのが栃木県小山市に店を構える『浅野屋茂兵衛』の創業者・丸地一夫さんだ。丸地さんは東京で米穀店に就職、配達に行っていた得意先の1つが、早稲田の『浅野屋』だった。「店の店主が新潟県小千谷市の出身で、故郷を懐かしむように「へぎそば」の話をしてくれたのです。母が食堂を営んでいた実家に戻り手伝っていたのですが、再び東京に行き、『浅野屋』さんで修業させてもらいました。その後、食堂をそば店に衣替えし、『浅野屋』ののれん分けをしていただきました」と話す。
丸地さんはそば店を開業してからも「へぎそば」のことが忘れられず、独自に研究を続けた。独特の鮮やかな色味などを出すことに苦労し、試行錯誤を重ねてようやく納得のゆく「へぎそば」が完成したが、風味が強いそばが好まれる当地ではまったく売れず、今度は販売に苦労することになった。この苦境を転換させるきっかけとなったのが、日光市で秋に開催されていた「日光そばまつり」(2019(令和元)年まで開催)への出店だった。この出店をきっかけに『浅野屋茂兵衛』の「へぎそば」の認知度が上がり、県内外からお客様が来店するようになったという。今では地元のお客様からの注文も入るようになり、栃木で本格的な「へぎそば」が食べられる店として知られるようになった。




