そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

栃木県小山市『浅野屋茂兵衛』

 つなぎに海藻の布海苔を使い、つるつるとした食感が独特の「へぎそば」は新潟県の郷土そばとして良く知られている。新潟県から遠く離れた栃木県で、この「へぎそば」を店の看板商品として育てたのが栃木県小山市に店を構える『浅野屋茂兵衛』の創業者・丸地一夫さんだ。丸地さんは東京で米穀店に就職、配達に行っていた得意先の1つが、早稲田の『浅野屋』だった。「店の店主が新潟県小千谷市の出身で、故郷を懐かしむように「へぎそば」の話をしてくれたのです。母が食堂を営んでいた実家に戻り手伝っていたのですが、再び東京に行き、『浅野屋』さんで修業させてもらいました。その後、食堂をそば店に衣替えし、『浅野屋』ののれん分けをしていただきました」と話す。
 丸地さんはそば店を開業してからも「へぎそば」のことが忘れられず、独自に研究を続けた。独特の鮮やかな色味などを出すことに苦労し、試行錯誤を重ねてようやく納得のゆく「へぎそば」が完成したが、風味が強いそばが好まれる当地ではまったく売れず、今度は販売に苦労することになった。この苦境を転換させるきっかけとなったのが、日光市で秋に開催されていた「日光そばまつり」(2019(令和元)年まで開催)への出店だった。この出店をきっかけに『浅野屋茂兵衛』の「へぎそば」の認知度が上がり、県内外からお客様が来店するようになったという。今では地元のお客様からの注文も入るようになり、栃木で本格的な「へぎそば」が食べられる店として知られるようになった。

『浅野屋茂兵衛』の店舗内外観。
 「「へぎそば」を作ろうと思い、売れるようになるまで40年かかりました。途中でくじけそうになったこともありましたが、やめなくて良かったと、今は思っています」と話す丸地さん。「へぎそば」のみならず、県内産在来種のそばを使う二八そばや、県内産小麦「イワイノダイチ」を使う「開運小山うどん」、修業先から受け継ぐ100 年ものの秘伝のたれを使う「天丼」など、『浅野屋茂兵衛』には特色ある品が他にも多い。現店主で娘の丸地淳子さんは「インスタグラムを見たことをきっかけに来店してくれる若いお客様も増えてきました」という。若い世代が喜ぶ〝映える〟品も淳子さんのアイディアで作り出している。
看板商品「へぎそば」に天ぷらをつけた「天付き匠へぎそば」は、丸地さんが苦労の末に生み出したものだ。薬味に辛子を添えるのも本格派。黒天丼ともいえる秘伝のたれを使った天丼はセットメニュー(天丼麺セット)でも人気がある。
<店舗ホームページ>https://asanoya.info

浅野屋茂兵衛

栃木県小山市間々田1157-1

0285-45-1719