そばの散歩道

めんの数字あれこれ

三たて

挽きたて、打ち立て、茹でたてのそばを称して「三たて」という。
おいしいそばにするための三つの条件である。

最初の「挽きたて」とは、製粉したばかりのそば粉を使うという意味。そば粉は香りや風味の劣化が非常に速い。だから、挽きたての粉であることは、おいしいそばに仕立てるための不可欠な前提になるわけだ。

第二の条件の「打ち立て」。これは文字通り解釈すれば、そばに打って間髪を置かずに茹でるということになるが、ここで少々問題が生じる。

たしかに、めんにしたそばも時間とともに劣化していく。ところが、だからといって包丁で切ったばかりのそばをすぐに湯に入れても、うまく茹だらないという。打ち立て(切り立て)の段階ではまだ、そば粉と水とが十分に馴染んでいないせいなどともいわれるが、そば職人には、古くから経験的に知られていたことのようだ。もちろん、玉にこねてから延ばすまでに時間を置く場合もあるし、一概にはいえないことではあるが。

最後の「茹でたて」についてはいうまでもないだろう。茹でたそばがたちまちのびてしまうことは常識である。茹で上げたら素早く水切りして、さっさと食べなければいけない。

ただし、ここで大切なのは水の切れ具合だ。ざるや蒸籠から水がしたたっているようなもりそばでは、そばの風味は十分には味わえないし、つゆも薄まってしまうことになる。