そばの散歩道

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隠れたこだわりの店

メニューを見ると種物もご飯物もセットメニューもある、いわゆる街のそば店だが、隠れたこだわりのある店が『佐野屋本店』だ。提供されるそばは地元鹿沼市内産2種類、県内産、長野県産と4種類にもなる。このうち3種類の食べ比べができる「味くらべ」や、鹿沼市内産を使用する十割そば、そばがきなど、そば好きも納得するような品物が並ぶ。ご当地そば「にらそば」も好評で、県外からもお客様が来店されるというのもうなずける。
3代目主人・長孝夫さんは、「うちの店は大衆店です。お客様には味・価格・量のいずれでも満足していただきたいのです」と話す。しかし、長さんの言う味・価格・量の3つを一定の水準で保つことは容易なことではない。
『佐野屋本店』がお客様を満足させてきた秘訣は、研究熱心さと、食材への気遣いだ。

外観は街に根付いたそば店、気軽で入りやすい。店内もほっとできる雰囲気だ。
自家製粉をさりげなくアピールする石臼。
 長さんが店に入った当時は景気の良い頃で、店が忙しく、他店で修行することができなかった。そこで、東京都組合がかつて開講していた「蕎麦技術研修講座」に参加し、東京まで通った。当時の講座は、かんだやぶそば・堀田康一氏をはじめ東京を代表するそば店の店主や研究家が講師を務めていた。
 「この講座で一流の仕事を学ばせていただきました。自分の店でもこれを活かして、汁の作り方なども見直しました」という。10年ほど前からはそばの丸抜きを仕入れて自家製粉も始めた。製粉に関する知識は、取り引きのある製粉会社に教えを受けた。時間のある時には、評判になっている店を食べ歩くなど、長さんは研究熱心だ。
 『佐野屋本店』では、店で使う食材にも気を遣う。そばはいうまでもなく、小豆島の醤油に愛知県産の本みりんを使ったかえしに、自店で削る節類をたっぷりと使うだしで作る汁は、もり汁・かけ汁ともに旨味が強い。米や野菜も地元産を中心に、県内産をはじめ、良いものを使うように心がけている。長さんは「今はお客様が家庭でも美味しいものを食べている時代です。だから飲食店に対する目も厳しい。良い材料を使わないとすぐにわかってしまいます。だからこちらも美味しい物を提供すればお客様もわかってくれるはずです」と話す。
 
上から鹿沼市・栗野産、同・板荷産、長野県産の3種類のそばを食べ比べることができる「味くらべ」。自慢の大海老を使った天ぷらも人気。
鹿沼の「にらそば」といえば冷たいそばが定番だが、温かいそばににらを乗せただけでは面白くないと考えたのが「にら玉そば」。にら・卵・かけ汁が一体となって旨みがある。
「にらそば」は鹿沼のご当地そばとして知名度も上がった。地元産の幅広で柔らかく、適度な歯ごたえのあるにらの食感が楽しい。
 こうした研鑽や努力をバックグラウンドにしながら、良い食材をできるだけ手作りで提供することで、『佐野屋本店』はお客様の期待に応えてきた。仕込みにも手間がかかるが、4代目・長靖之さん、晃代夫人と永年勤める従業員がフォローする。
 「鹿沼は市内にそば店も多く、皆さん努力して美味しいものを提供しようと頑張っています。私も頑張りたい」と笑顔で話す長さん。本物の味を提供し、街の人に愛される店として営業してきた『佐野屋本店』。明治42(1909)年の創業から来年で110周年を迎えようとしている。

佐野屋本店

栃木県鹿沼市天神町1855

0289-62-0563