そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

「お初天神」とともに
大阪を代表するそばの老舗

 JR・各線の大阪駅・梅田駅近く、ビルが立ち並ぶ御堂筋から一本入った場所に「露天神社」(通称「お初天神」)が鎮座する。ここは人形浄瑠璃・文楽・歌舞伎の演目として名高い「曽根崎心中」の舞台となった場所だ。お初と徳兵衛の心中事件の話だが、現在は恋愛成就の神社として、若い女性の参拝が多い。この神社の近くに店を構えるのが『夕霧そば 瓢亭』だ。創業当時は入り口近くの部分だけが店舗であったが、火災などを経て、現在の店の大きさになったという。周囲の喧騒とは一線を画す、落ち着いた雰囲気になっている。

『夕霧そば 瓢亭』の店舗内外観。初代が建具職人だっただけに、店内の造作は凝っている。周囲の喧騒とはかけ離れ、静かな雰囲気で食事をすることができる。店舗入り口の部分が創業当時からの店の部分だ。
 『夕霧そば 瓢亭』は、1952(昭和27)年に創業、初代店主・林芳郎さんは「大阪の名に恥じない名物」をと、開業から2年後に「夕霧そば」を売り出した。近松門左衛門の『郭文章』の夕霧太夫から命名した「夕霧そば」は、毎年11月から12月にかけて徳島県・高知県から1年分を仕入れる柚子の上皮を手作業で細かくすりおろし、更科粉に練りこんで製麺する。1954(昭和29)年に行われた「大阪府麺類組合連合会・新調理品展示会」に出品、「最高優位賞」を受賞した。柚子を使っているため殺菌作用もあり、日持ちもするので、全国に発送している。つゆは、鰹節・宗田節・鯖節でだしを取り、醤油・砂糖・みりんで味を調える。上品な「夕霧そば」にも合う味つけだ。つゆには卵が入り、途中で味の変化も楽しめるようになっている。
「夕霧そば」は、柚子の上皮を細かくすりおろしたものを、更科粉に混ぜた変わりそばで、『夕霧そば 瓢亭』の名物商品だ。
梅肉としそ酢を混ぜて打った梅切りそばを使う「お初そば」は、「曽根崎心中」の登場人物であるお初の名前を冠している。
「づけ玉子」や「山芋のり巻き」といった魅力ある一品料理でお酒を愉しむこともできる。
 「夕霧そば」の他にも梅切りそばを使う「お初そば」、「黒そば」と呼ぶ一般的なそばも提供し、皿盛で提供する「カレーそば」も特徴的だ。一手間加えた一品料理も揃え、そばを食べる前にお酒を愉しむこともできる。「露天神社」に訪れる女性が増え、店にも女性客が多くなった。最近はインバウンド需要も高く、外国人観光客も訪れる。大阪を代表する名物を作ろうと努力した初代の心意気を、現在は3代目・林正行さんが受け継ぎ、名実ともに大阪を代表する老舗そば店ののれんを守り続けている。
<店舗ホームページ>http://hyoutei-soba.com

夕霧そば 瓢亭

大阪府大阪市北区曾根崎2-2-7

06-6311-5041