そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

厳しい現状をアイディアと
技術・知識で乗り切る

 「そば屋をやるつもりは全くなかったのですが、父に説得されて店に入り、そば打ちも独学で学んで今に至っています」と話す『田毎庵』の店主・田中泰章さんは、当地出身で東京の大学を卒業後、教育関係の出版会社に勤務していた。父・吉泰さん、母・友子さんが、田中さんの兄と店を営業していたが、兄が店を辞め、店に入ってほしいと、東京に日参し説得する吉泰さんに応じ、郷里に戻りそば店を継いだ。その後、2002(平成14)年に現在の店を新築、一部機械を使用していたそば打ちも完全に手打ちにし、調理全般を担当していた友子さんから受け継いだつゆも研究を重ねて徐々にバージョンアップした。

『田毎庵』の店舗内外観。2002(平成14)年に新築した。現在、店内の座席数は写真よりも減らしている。のどかな風景の中に佇む旧店舗(写真左上)もしっかりとした造りだったことが写真からもわかる。また、昨年には新型コロナの感染対策に対応すべくデッキ席(春~秋に使用)設けるなど時代に即した営業形態へ転換すべく改築を実施した。
 『田毎庵』のかつお節は、自ら現地まで足を運んで決めた高知県と鹿児島県の業者から節のまま仕入れ、自店で削って出汁を取る。「先代もやっていたので当たり前のことだと思っていました」と言うが、手間のかかる作業を毎日淡々とこなしている。しっかりとした味わいながら、後味がすっきりとしているつゆは、細打ちのそばと相性が良い。田中さんはつゆとそばのバランスを大切にしながら、お客様が美味しいと感じてくれるつゆ作りを目指している。出汁についての探求心は「だしソムリエ1級」に踏まえ、認定講師の資格を取得するまでになっている。「美味しいものには理由があると思うのです。お客様に美味しさをきちんと説明したいと考え、資格を取りました」という。
王道の「天せいろ」は人気商品だ。野菜だけの「野菜天せいろ」も用意 する。田中さんこだわりのつゆ、手打ちそば、天ぷらと、どれもが手間をか けて作られている。
冬季の限定「たっぷり肉そば」は、国産豚肉・油あげ・長ねぎが商品名 の通りたっぷりと入り、寒い季節にはぴったりだ。温かいそばでも、そばは しっかりとしていて、様々な旨味が出たつゆとよく合っている。
テイクアウト需要に応えようと、店で提供している会席料理を活かした「テイクアウト会席弁当」(写真の他に炊き込みご飯と汁物がつく)。
 そばは北海道産のそば粉を使用する手打ちそば。細目だがしっかりとしたそばだ。オーソドックスな品物以外にも、揚げ玉子を使用した「冷し田毎」、ちくわ揚げと揚げ玉子を乗せた「野球」といったオリジナルメニューがお客様を楽しませる。そばは普通盛(150g)〜気合盛り(400g)まで5段階。そば好きは心ゆくまでそばを味わうことができる。
 『田毎庵』には東京や名古屋から来店する方もいる。地域柄観光客が多く、新型コロナの影響は甚大だ。しかし、この厳しい状況を田中さんはアイディアと技術・知識で乗り切ろうとしている。テラス席の増設をはじめとした店内の改装や、出汁の知識を活かした物販、テイクアウトの充実。この機会にできることは何でもやってみようという前向きな姿勢だ。しかし、何よりも研究を重ねたお客様が「美味しさ」を感じられるそばの存在は大きい。のれんには「日本一ちっぽけなそば処」と書か
れているが、田中さんのそばに対する思いと志は大きい。

田毎庵

長野県諏訪市中洲4335-1

0266-58-0106