そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

「米沢藩御用掛込蕎麦」
300年の歴史

 「当時から営業を続けている店はうちだけです」と話すのは、『粉名屋小太郎』の12代目店主・金田和博さん。当時というのは、米沢藩6代藩主・上杉吉憲の時代だ。そば店は「饂飩屋」と呼ばれており、藩からの許可を得て「饂飩屋株」と「鑑札」を所持しないと営業できなかった。これを得たのが1712年のことだという。「饂飩屋株」を所持する者は御役御免(免税)となったが、いざ戦となれば洗浄にお供して食事を提供する役目を負った。武士たちが大急ぎでそばを食べ、戦場へ出陣する様子が「米沢藩御用掛込蕎麦」と呼ばれる由縁だ。米沢藩から営業許可を得ていた店は23軒、『粉名屋小太郎』はそのうち現存する唯一の店である。屋号の「小太郎」は、代々当主が名乗ったことに由来する。

店内どの席からも見える中庭から自然光が入り、余裕のある造作にさらに広さを与えている。
 金田さんは、米沢市に隣接する高畠町の酒屋に生まれ、喜美子夫人との結婚で店に入った。今は13代目の若主人・金田洋一郎さんが共に店を支える。
 「以前はラーメンなども扱う食堂的な営業をしていて、出前もしていましたが、1964(昭和39)年に、義父がそば専門に切り替えました。出前をやめることについては、家族も反対したそうです。しかし、自身の体のことも考えて、大きな決断をしたようです」
 しかしその後、売上げは順調に推移した。その要因の1つが「割子そば」の販売だった。東京・浅草の漆器店の勧めで始めた「割子そば」は、ラーメンが60円ほどの時代、350円で売り出した。当時は、米沢市内の織物会社の景気が良く、組合の宴会で提供したところ好評を得て、高価格にもかかわらず評判になった。
店の看板メニュー「割子そば」。店売りに特化した際の起爆剤となった。
「深山冷そば」は海老天・山菜・山芋・なめこ・きゅうりなどがのる夏季限定の一品。
定番のそば前を盛りわせた「そば前セット」と地域伝統の味「薄皮なすうま塩漬け」。
 『粉名屋小太郎』では、通常のそばの他、手打ちの十割そばも用意する。定番の品物の他に「雛ちらしそば」(2~3月)、「山菜そば」「山菜とろろそば」(4月初旬~5月中旬)、「深山冷そば」(6月初旬~9月)、「松茸そば」(10月)、「そばがき雑煮風(12月初旬~3月初旬)といった四季折々の味を取り入れた季節物を提供している。降雪も多い冬季はどうしても営業的には厳しいが、その分ゴールデンウィークから夏季のシーズンは忙しくなる。
 そばに特化したことで、専門店としての味を提供すること、先進的な店舗設計による店内の雰囲気など総合的な付加価値で、県内外のお客様や地元企業の接待など幅広い客層が来店する。

粉名屋小太郎

山形県米沢市中央5-3-19

0238-21-0140