そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

東京で学んだそばを
地元の味覚に合わせる

 1897(明治30)年、青森県木造町(現つがる市)出身の柿崎金九郎さんが青森市に出てきて屋台をはじめたのが店の始まりだという『五代目カネシメ蕎麦処柿崎』は、創業130年を迎える老舗そば店だ。2代目・柿崎藤次郎さんの代には店を構え、3代目・柿崎幸一郎さん、4代目・柿崎藤太郎さんと歴史を繋いできた。現店主で5代目・柿崎浩幸さんは、大学卒業後、東京の名店『本むら庵』に就職し、本店をはじめ熱海の関係店、ニューヨークの支店などで修業を重ねた。1998(平成10)年に父親である藤太郎さんに病気が判明、急きょ実家に戻り家業を継ぐことになった。実家に戻ってから3か月後、藤太郎さんが他界、店の味を受け継ぐことなく後継者となったが、2002(平成14)年には店を改装し、5代目として本腰を入れて店を受け継ぐ体制が整った。

『五代目カネシメ蕎麦処柿崎』の店舗内外観。平日は周囲の会社などに勤めている方が多く来店する。カウンター席もあり、1人でも気軽に来店することができような造りになっている。
夜定食の1つ「そば定食」は、そば(温・冷)、小海老天丼、温泉玉子、みそ汁がセットになったサービスメニュー。1つ1つに丁寧な仕事が垣間見えるのは、修業の成果でもある。
 浩幸さんは「中華そばは焼き干しを使う昔からの味で提供していますが、そばは、東京で学んだそばを提供したいと思い、実際に出してみると地元の方の口には合わず、試行錯誤してお客様に納得いただける味にたどりつきました」と話す。東京風のそばを青森の方に合う味に調整しつつ、「鴨ざる」など新たな商品も品書きに加えるようにしてきた。また、そば店で酒を愉しむ文化がない当地でも、「そば前」の良さを知ってもらおうと酒肴類も充実させ、徐々にお客様にも受け入れられるようになった。
 そばは青森県産「青森海道そば」を使い、基本は機械打ちだが、『本むら庵』仕込みの十割手打ちそばを数量限定で提供、店伝統の中華そばも手打麺を用意している。夜は「天ぷら定食」「そば定食」2種類の夜定食や宴会メニューも提供、食事と飲酒両方の需要に応えている。
年間を通して提供する「中華ざる」は店伝統の中華そばメニューの1つだ。あっさりとしたつゆに中華麺がよく合う。
青森らしい酒肴「生姜味噌おでん」と「ベビーホタテの天ぷら」。からしではなく、生姜味噌で食べるおでんは地元のご当地グルメだ。
 地元のお客様はもちろん、出張の方や県内でも遠方から『五代目カネシメ蕎麦処柿崎』のそばを求めて来店される。東京の名店で培った確かな技術をベースと地元の味覚を融合させた浩幸さんならではの味が現在の店の味なのだ。そして、懐かしさを感じる伝統の中華そば、様々な要素が相まって店の魅力が増す。5代目として先代達に恥じることなく店を守っている浩幸さんの努力こそが、創業150年を目指す歴史ある店を守る原動力になっている。
<店舗ホームページ>https://kaneshimekakizaki5th.shopinfo.jp

五代目カネシメ蕎麦処柿崎

青森県青森市長島1-6-5

017-722-4967